前回は完全に美容の素人だった僕が美容に関心を持つきっかけを書きました。今回はそこからなぜ僕がエステティシャンという道を選んだか、その理由と当時の葛藤を書きたいと思います。
自分がエステティシャンを選んだ理由が自分の性格を反映し過ぎていて恥ずかしいのですが、エステティシャンを目指されている方、参考になりましたら幸いです(なるのでしょうか笑)
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僕は大学を卒業して、新卒で入社した会社では数年間生産管理という事務畑の仕事をしていました。製造メーカーでしたので、自社工場があり、原価計算や資材調整など営業と工場との橋渡しが主な役割です。特に理系脳だったわけでも、パソコンに強かったわけでもありません。ですが幸い、上司・先輩にも恵まれ非常に充実した社会人生活を過ごさせてもらっていたと思います。しかし、数年勤めていく中で、事務仕事で社内に居続ける毎日、このままお客様と関わることなく、社内の人たちだけの関わりだけで社会人として大丈夫なのか、と少し心配を覚えるようになりました。
お客様の顔も知らず、自分で物を売ったことがないというのは社会人として何かが足りていないのでは?と当時の僕は思ったわけです。
当時の僕の営業のイメージはBtoB(企業間取引)よりもBtoC(企業対個人)に偏りが強く、接客業をしたいと考えるようになっていました。学生の時のアルバイトもずっと接客業で、それが性に合っていたこともあります。
そして転職を決意。ただどの業界に飛び込むのかは非常に大事な選択です。どんな接客業に就くのが良いか、転職先の条件をこのように考えていました(技術職に憧れがあったことも多分に影響しています…)
①せっかく転職するのであれば何か人と違った仕事がしたい
②自分も興味があり、納得して販売できるものがいい
③仕事を通して技術が身につくもの・必要なものがいい
④取り扱う商品は自分の私生活でも役立つものがいい
⑤取り扱う商品は親族・知人にも提供ができ・喜んでもらえるものがいい
⑥仕事で得られる知識・技術は私生活でも役立つものがいい
⑦仕事を通して自分が成長できることがいい
⑧いつか独立を視野に入れられることがいい
などです。
社会に生きる以上、誰しもが何かしらの仕事をしなくては生活が成り立ちません。ひょっとしたら人生の半分近くを仕事の時間に費やすかもしれません。僕はどうしてもその仕事の時間を自身の私生活にも活かしたかったわけです。
料理人は仕事で得た技術を私生活にも活用できます。大工など現場仕事の人は自社材料でDIYやリフォームができるかもしれませんし、知人の手伝いもできるでしょう、アパレルの店員さんもファッションが、絵が上手な人は知人の結婚式のウェルカムボードを書いてあげることもできると思います。僕はそういう「何か」を提供できる人になりたかった。僕がしていた事務仕事はそうしたものが得られにくく、その何かを仕事を通して得られるのであればそれが一番効率が良いと考えました。
そしてこれらを全て満たすもの、それを考えに考え抜いた末、見つけた答えがエステティシャンでした。
エステティシャンは、男性でやっている人数が少ないので、人とは違った珍しい仕事であること。自分が美容に興味があること。技術職であること。お客様と接するほど技術が高まり、知識や技術は追求のしがいがあり私生活にも役立つこと。親族・知人にも提供ができること。そしてエステティシャンは気遣いやマナー、ホスピタリティ精神が必要不可欠で人間的にも成長ができること。考えれば考えるほど条件にぴったり当てはまる答えでした。
ですが、本当に男性でエステティシャンになれると確信があったわけではありません。この答えを思いついたときは自分でも驚きましたし、なれるはずが無い職業、という考えのほうが大部分を占めていました。既に若くも無かったので取り返しのつかない選択になるのではないかという大きな不安もありました。もし僕が美容に興味を持っていなければ、人とは違う仕事がしてみたいと思っていなければ、違う答えになっていたと思います。
そしてそんなことを考えていることを当時は誰にも言うことができませんでした。きっと理解はしてもらえない、変なことを言い始めた、おかしな方向に向かってる、と思われるのが怖かったわけです。思いのほか、こういうことは親しい人にこそ言えないもので。
美容にこれまで関心を持っていないような友達がいきなり「エステティシャンになろうと思う」と言い出したら驚きますよね。「急にどうした?」ってなると思う。今でこそ「男性美容も流行ってるしね」という認識もあるかもしれませんが、当時は「それは無い」という風潮の方が強かったように思います。実際、親しい友人に打ち明ける時も「変なこと言い始めたし、これから距離を置かれるかもしれない」とすごく緊張をしながら話をした覚えがあります。親に話すことができたのはそれから更に2年以上経ってからでした(既にエステティシャンとして勤めていました 笑)
考えすぎでは?と思われるかもしれませんが、当時の僕としてはそれくらい一大決心だったわけです。
では、なぜそこまで悩みながらもエステティシャンになることを貫いたかと言いますと、その選択が「自分が思い描く理想の生活を手に入れられる職業」だと思ったからです。仕事で学んだことが自身の生活でフル活用ができる。僕の中でエステティシャンの魅力はここにあるように思います。どの道に進もうか悩んでいた中で、この答えを見つけたときは自分でも驚きこそしましたが、頭ではこれ!と決めていたように思います。
もちろん、他にもお客様を綺麗にでき、喜んで頂ける仕事であることなど、エステティシャンの魅力はまだまだあります。しかしそれは本当にエステティシャンになってからのお話。その喜びを得られるにはエステティシャンとして学び、経験を積む必要があると思います。僕もまだまだ見習いです。
と、ここまで自分の考えを信じ職を決めたわけですが、当初の懸念の通りやはりここからが苦労の連続でした。男性でエステティシャンを目指すことは決して簡単ではなく、結果、厳しい現実が重くのしかかってきました。とにかくエステティシャンになるまでの道が遠いわけです。
もちろんこの道を選んだことを全く後悔していませんが、険しい道が続いたのは確か。得られたものも多いですが、それ以上に手放してきたものがあるのもまた確かです。
「これ!と思ったものには後が無い気持ちで尽くす。何があっても芯をぶらすな」
当時通っていた空手の師範から頂いた言葉ですが、この言葉がなければ途中で脇道に逸れていたかもしれません(笑)自分の判断が正しいと思い込むのは大変ですが、大切だと思います。
ではその苦労がどんなものだったのか、次回から実際にエステティシャンとして勤めるまでの経緯を書き綴りたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!